対談 − WEBプロ年鑑 ‘07 −
人と人とをつなぐメディア展望論
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個人から発せられる情報について

藤井:近年、ネットユーザの数が膨大になって、昔と比べると受け手は「巨大な情報群から欲しいものをどうピックアップするのか?」、流し手は「どう自分の情報を見てもらうのか?」と言うことが、問題になってきますよね?
江崎:そうですね。それ関連でちょっと面白いデータがあるんです。10年前、インターネットというのは、圧倒的に情報のダウンロードが多かったんです。しかし、最近は、ブログやホームページなど、ユーザがネット上にアップロードしている量が増えてきました。今後もアップロードがどんどん増えていくだろうと予想されます。そうすると、Webサイトの役割は、ユーザからアップロードされたいろいろな情報を集約して、フィルターをかけて、ユーザが本当に欲しい情報をきちんと提供するということになると思うのですが……。
藤井:それは、難しいですよね。ユーザニーズの分析もそうですけれど、分析した所で、大きく大別できなくて10人いたら10人のニーズがある世界になってくると、各個人がどのような情報を求めているかを分析して、その人に対して的確に情報を提供してあげるというWebの作りになっていかなければいけません。結局Webがどんどんユーザニーズに対応して進化していくことになります。でも、現実には、「個々のユーザを分析して」なんていうのは、難しすぎます。
江崎:マスメディアではない個別のメディアは、ほとんどありえないですよね。そういう意味で言うと人間は、“群れる”。“群れる”と言うのは、プログであったり、MixiをはじめとするSNSであったりするんです。今まで、個別でインターネットを楽しんでいた人が、「一人で遊んでいても楽しくない」と言うことで、コミュニティを形成し、グループになって行った結果、こういう現象が起きたんです。しかもこれの面白い所は、地域は全く関係ないんです。そこで面白いデータなんですが、1人あたりの情報検索量は、田舎でも都会でも同じなんですよ。Webが入り口なので、地理的な距離は関係ないということですね。でもこうなってくると、一様のWebコンテンツではすべてのユーザのニーズには答えられない。つまり、ユーザが多種多様化してくるので、1つのWebサイトでもいくつかの入り口を持たないといけないですよね?
藤井:そうですよね。しかも、企業側は同業者との差別化を図らなければいけない。それを考えないとみんな同じサイトになってしまいます。そこで、企業側がとる方策として、SNSやブログを対象とした自社製品の属性に共感しうるコミュニティを形成し、そこでのマーケティングを通して、いかに顧客を獲得していくか、が重要になってくるのです。しかも、マーケティングツールとしてのSNS利用は大変便利です。即、生の声を得ることができますし、原則紹介者しか入ることができないので、オープンになっている他のサイトとは違い、きちんとした意見を得やすいとも考えられています。デジタルコンテンツの場合、検索で出てきたサイトが使いづらくて、面白くなければ、その1cm下をクリックすればいいですよね。その下には競合会社がひしめき合っているんですから。こうなってくると、すぐ他の会社に顧客を取られてしまいます。
江崎:そうすると、検索エンジンの公平性はすごく重要になってきますよね?
藤井:そうですね。興味深い話しがあるんですが、最近、検索したらプログばかりが出てきて、欲しい情報がゲットできないことも多いですよね?なので、今後の動きとして、検索エンジン側がプログに対する表示順位を下げようとしている…なんて言う噂もあります。検索エンジン側としては、ユーザが求めている検索結果を表示することが一番重要ですからね。

Web制作会社について

藤井:企業側から見ると、どんなWeb制作会社が使いやすい、使いたいと思いますか?
江崎:雑誌などでは、良くできたWebサイトとその制作会社を紹介していますよね。でもコンシューマーレポートみたいなのは見たことありません。「このサイトは何点」とか、「この会社はどんな感じだ」とか、そんな感じのレポートが必要だと思います。評価を客観的に見ることができるものがあると、頼む側としてはうれしいですね。顧客満足度とか、そんな資料が欲しいです。Web制作というのは、新しいビジネスなので、制作会社に“大手”と呼ばれるものはないですよね?そうすると、かなり当たりはずれがありますよね?結局、頼む時にどこが一番いいのか分からないんですよ。なので、数字化するのが、大切だと思うんですが……。例えば、建築士みたいにWeb制作にも社会的な資格が必要になるといいと思うのですが……。
藤井:Yahoo!にSDA(サイトデザインアーキテクト)認定というウェブサイトを論理的に設計、構築、マネジメントする為の認定資格があるんですが…」まだまだ認知度が低いですね。
江崎:そういうものは、教育機関がきちんとしなければいけないと思います。結局、先ほども話題になりましたが、いい情報アーキテクトを作り上げていくというのが必要ですよね。そうするといいアーキテクトがいる所は、信用がでてくるだろうし。でも、そのアーキテクトの数が非常に少ない。現在この分野は企業が先で、大学側が後なので、大学側でアーキテクトを育てて、社会に出して行くという状況を作らなければいけないんでしょうね。

ITの未来について

江崎:SNSの効果はすごいので、企業のWebにどう埋め込んでいくかが大切ですよね。
藤井:そうですね。SNSの有効利用、つまりはユーザーの持つ情報をどう引き出し、有効活用していくかです。これからはWebが情報メディアのメインになり、テレビとWebは相互に情報を補完しあうものになってきます。テレビでわからないものをWebで調べ、Webで得た情報を元にテレビを見るという感じですね。そして、Webはますます「ユーザが使いやすい」、「ユーザ中心」の媒体になっていきます。なぜなら、インターネットの世界では、今考えていることを、次の瞬間の世界に向けて発信することができる。しかも、情報は陳列棚のように簡単に入れ替えられ、自分の必要な情報だけをまとめて、つなげていくことができる。これらは紙媒体ではできなかったことです。ネットはユーザと情報発信者がお互いに交わることができる媒体なんですよね。
江崎:今では誰もが勝手に情報をあげることができますよね。そうなってくると、逆にプロフェッショナルが持っているきちんとした情報が欲しくなると思うんです。さっきも話に出たように、「検索をしてもプログしか出てこない」では困ったことになりますよね。やはりきちんとしたものがないと、そういうものは機能しなくなってきます。だから、洗練されたサイトだけがプロフェッショナルとして伸びてくるのです。
藤井:そうなってくるとサイトの信頼度はどうやって計ればいいのでしょうか?
江崎:やはり、信頼度が高ければヒット数が多くなるんですよね。そして、それがグルーピングされていき、信頼度が上がっていくみたいな研究がいくつかあります。プログは流行なので、書けばある程度のアクセスが集まってしまいます。でも正しいのかというのとはそれは違いますよね。どういうパターンでアクセスが行くのかという研究もあるのですが、そこから分かったのは、信頼度が高ければヒット数は下がらないということなんです。
藤井:面白い研究ですね。それらのことも含めて、Web制作をしていかなければいけませんね。本日は、ありがとうございました。
江崎:ありがとうございました。
(文中、敬称略)
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