対談 − WEBプロ年鑑 ‘07 −
人と人とをつなぐメディア展望論
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個人情報について

江崎:最近は、個人情報など管理すべきものの対象があいまいで広がっている気がしますが、Webの管理を受ける会社は、どこまで引き受けて、どこまで引き受けないのかという判断が難しいのではないですか?
藤井:これは、本当に難しい話です。特に、個人情報保護法が発足されてからは、企業は個人情報について非常に敏感で、Webを制作する際に、企業側と守秘義務を結びます。最近はこの契約のペナルティが青天井で、「これで何か漏洩したら制作会社が損害を全部払う」という形になることが多いですね。
江崎:それは、ちょっといけないことではないですか?
藤井:ええ、恐ろしい話しです。結局、500万円で受注しても技術はいたちごっこですから万が一情報が漏洩して損害賠償を5億請求されたら大変ですよね。一応そんな時のために、我々も情報漏洩保険に入っています。
江崎:企業自体が漏洩保険などに入る方がいいのではないんでしょうか?
藤井:そうですよね。情報漏洩の8割近くは内部からなので、企業の情報漏洩に対するモラルを上げることが大事です。現在、個人情報保護認証のPマークやTrust Eを取得する企業も多くなっています。これを取得すると、きちんとしたコンサルティングを受けられ、対外的な信頼度も増すので、ぜひお勧めしたいと思います。
江崎:最近、企業のネットワーク自体がWeb上にあり、作業をそこで行うことが多くなり、Webビジネスがそのまま基幹ネットワークになってきていますよね。ということは、ティフアナさんは、基幹ネットワークの情報システムの外注を請け負っている業者さんよりは、より高い技術を持っているのではないのですか?
藤井:そういうことはないですが……。確かに、Web制作と基幹ネットワークのシステムをリンクしてほしいとリクエストしてくることが多くなってきています。これもすごく難しい問題なのです。ハッキングなどの問題もありますので、本当はサーバーに個人情報を置くべきではないと思うんですね。基本的には、「サーバーにあるものは見られている」という考えの元に作業した方がいいのです。データがサーバーになければ、他の人に見られることもないので、安心なのですから。
江崎:いろいろ話をお伺いしていると、企業のリクエストを組み込んで企画されていますよね。そんなニーズがわかっている制作会社は少ないのではないでしょうか?
藤井:どうでしょうか。大手の企業様から色々とお仕事を頂けているので、我々のやっていることはそれほど間違っていないのでは?とは思います。情報漏えいについては、企業が最近かなり敏感になってきています。しかし、セキュリティを上げようとすれば、それなりにお金も掛かってきます。でも、「Webにそんなにお金は出せないよ!」という所も現実問題あるんですよ。
江崎:最近、開いた話ですが、日本企業の売上高に対するIT投資額の比率は世界で50番目ぐらいらしいのです。低いですよね。もちろんトップはアメリカです。日本は、GNPがすごく大きいので、グロスの投資、マーケットとしては大きいのですが、企業が持っている全体の予算に対するITの予算比率がすごく小さいのです。これも1つのメッセージとして、これだけ大きなWebが企業のPRとしても紙媒体よりも大きくなっているので、日本企業も広告費の投入場所を変えなければいけないですよね?
藤井:最近では、テレビを見ながらネットをしている人も多く、テレビで分からないことや、詳しく知りたいことが出てきたら、とりあえずネットで調べる。そこで詳しく見てから、次のアクションを起こす。なんていう感じでネットを使っている人が多いです。ここに着目して、これからは、企業は、テレビとネット、マスマーケティングとWebマーケティングを考えてPR活動をしていかなければいけません。
江崎:しかも、Webでの広告の効果は、以前のものとは全く違う質のものになってきたのではないですか?
藤井:今までのマスメディアと違って、効果測定がしやすくなりました。アクセスログを解析することによって、すぐに効果が分かります。例えば、すごく簡単なやり方ですが“TVで宣伝したもの”、“メルマガで宣伝したもの”、“雑誌広告を出したもの”など、それぞれ入り口のアドレスを変えておけば、どの広告に対しての反応があったか、すぐ分かります。広告の効果を見ながら、奥のコンテンツを前に持っていったり、前のコンテンツを後ろに持っていったりすることがWebなら比較的簡単にできて、結果もすぐ出せるのです。
江崎:これって、デパートやコンビニでは、当たり前でやっていることですよね?
藤井:そう、実店舗と同じなんです。でも面白いのは、お店だとスペースが限られているので、人気のない商品は置けなくなるのですが、ネットは違います。スペースがたくさんあるので、何万点、何十万点でも置くことができます。売れ筋ではないけど、コンスタントに引き合いがあったり、季節ごとにヒットがあったりするような商品に対して、Webでは広告をアレンジして、売ってゆくことができるのです。
江崎:また物理的な店舗に比べると、ユーザは無限に情報を得ることできますよね。そのことによって、地理的な制限もかなりなくなってきていると思うのですが、そうすると企業のWebの企画を作る時に、かなりタイトにクライ アントと話し合いをして、煮詰めていかなければ、なかなかコンセプトが固まらないと思うのですが、どうでしょうか?
藤井:ええ、その通りです。地理的な幅が広がればデモグラフィック変数も変わりますし、ただ、そのコンセプトを固めるという部分での問題の多くはコミュニケーションにあると思います。経営陣が考えていることが、Web担当者にうまく伝わっていなかったりするのです。経営陣が「Webを使ってもっと売上げを上げたい」と思っても、Web担当者が話す時には、ものを売るための一要素である「アクセスを上げたい」という部分に主眼が置かれることになってしまったり。さらに制作会社とのミスコミュニケーションが重なって、どうしようもなくなる事も……。我々がその部分をお手伝いをすることも結構あります。他の制作会社に頼んでいたものが、うまく意思疎通ができずににっちもさっちもいかなくなって、うちへ来る。「とにかく1週間で150ページ作ってくれ」なんてのもあります。(笑)
江崎:企画を詰めていく段階で、かなり密なFace to Faceの話し合いが必要になってくるということですよね?
藤井:おっしゃるとおりです、でも最近はFace to Faceから逃げる人が多いです。これは世の中全体の傾向かも知れません。そしてそんな人は、電話に逃げて、結局メールに逃げてと言う感じになってしまう。Face to Faceだったら、相手が満足しているのかいないのかというのが表情で分かりますけど、メールでは全く分かりません。ですから、「メールのみのやり取り」→「ミスコミュニケーション」→「お客様の不安が増大」→「クレーム」なんていうことが生まれるのです。自社の担当者からは「うまくいってます」と言う報告があっても、突然クレームを受けることがあるんですよ。面白いのは、「こう言ったデジタル物を扱っているのに、結局最後は人間だよね」ってことなんです。
江崎:デジタルが進んでくれば来るほど、Face to Faceなんですよね。
藤井:結局、「Web制作するのも人間」なら、「クライアントも人間」で、その「Webを使うのも人間」なんですよね。ここを忘れて、プログラムだけで話してしまうと、何のためにWeb制作をするのか分からないということになってしまいます。
江崎:ということは、今後ティファナさんが、ビジネスの範囲を広げる時には、かなり注意深くなりますよね?つまり、コミュニケーションが十分取れる範囲じゃないと難しいですよね?
藤井:それはあるかもしれません。週に一回はFace to Faceのミーティングができるクライアントさんでないと心配です。なので、最近は少し強引にコミュニケーションをとることをしています。何もなくても、1日に1回連絡して、チェックする仕組みを作っているのです。クライアントさんにも、定期的に「ご不満とか疑問に感じていることはないですか?」と聞くようにしています。毎日連絡しているので、毎日「大丈夫ですよ」と言っている人が、突然、「社長出せ!」なんて事は言ってきませんよね?これはまだ試験中なのですが、成果は上がっています。
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